超臨界水を用いたバイオエネルギーの製造
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水素エネルギーシステム社会を築く上で、いろいろな水素製造原料を利用する必要があります。中でもバイオマスは、再生可能でありかつトータルで二酸化炭素を排出しない資源であるため、原料として利用できれば望ましいとされています。
バイオマス資源のうち、植物資源である木質系バイオマス、製紙系バイオマスの利用可能量は比較的大きいです。木質系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンからできています。 リグニンは木質系バイオマスに15-30%含まれる植物性ポリマーであり、炭素数3のアルキル側鎖が結合したフェノール骨格、すなわちフェニルプロパン骨格が単位構造となっています。リグニンは、この単位構造が、さまざま化学結合(エーテル結合、アルキル鎖等の結合)で結合し、多くの化学構造(ヒドロキシル基、カルボニル基、メトキシ基など多くの官能基)を有する高分子です。このような芳香環を含む安定な構造がゆえに、リグニンはセルロースやヘミセルロースに比べて難分解性成分として知られています。
私たちは、このバイオマスを超臨界水と反応させて水素、メタン等の燃料ガスにしてエネルギーを回収する研究を進めています。
超臨界ガス化を利用したバイオマスからの燃料ガス製造システム
本システムでは、バイオマス・水・触媒を超臨界水ガス化システムにて反応させることで、メタン、水素等の燃料ガスをつくります。超臨界水がリグニンと積極的に反応して、自らも水素源となりガスの状態まで分子をバラバラにします。このときの反応温度は400℃と、通常のガス化(600-900℃)よりも低いことから、工場等の排熱のうち、今までは使えなかった発電所などの500℃前後のものを利用することができます。
私たちの研究では、分解するのが難しいリグニンの超臨界水ガス化を検討しています。以前の研究では、触媒としてルテニウム系が有効であることが明らかとされてきました。今回は、金属価格がルテニウムの約1/40である、より安価なニッケルを金属源とした触媒を用いました。実験の結果、Ni/MgO触媒を用いることで、リグニン分解率を約80%まで高めることができました。下図にNi/MgO触媒上での反応機構を示します。リグニンはMgO上で部分分解し、生成した反応活性種が超臨界水とニッケル上で反応することでガスが生成します。
現在、グルコースやエタノール等の軽質のバイオマスモデル物質の超臨界水ガスかを進めています。なお、本研究は粉体・界面工学研究室と共同で行っています。
Ni/MgO触媒による超臨界水ガス化反応機構