研究背景 光エネルギーを化学エネルギーに変換する光合成は、環境に調和した工業プロセスとして関心が高い分野である。光合成プロセスの一つに、光触媒と酵素の複合した電子伝達系がある。酵素は穏和な条件で反応が行えるほか生成物選択性が高いことから、電子伝達物質を介して光触媒と酵素を複合した反応系が検討されてきた。これまでにCO2 や窒素の固定、メタノール合成、水素製造などの興味深い反応系が見出されたが、酵素は一般に光に弱いために工業プロセスへの応用が進んでいない。 研究コンセプト 我々は、電子伝達系の上述の問題が生じる理由は、光触媒と酵素を同一反応場で利用するために起きていることに着目した。この観点から、電子伝達系を構成する酵素だけを光から保護して「暗反応」として進行させるシステムを構築できれば良いとの着想に至った。これによって光エネルギーを利用して目的生成物を選択性良く合成できる人工光合成反応器システムの構築が可能になると期待される。このコンセプトの元我々のグループでは2つの方法を考案した
Fig.1や2のような酵素を使った人工光合成の場合、高価な酵素は繰り返し使う必要があるが一般的に酵素は水溶性で反応後に同一系から取り出すことが難しい。そこで酵素を固定化する必要があるが我々のグループではアルギン酸ナトリウムによるゲルとシランカップリング剤を複合した有機/無機ハイブリッドカプセルを作成しその中に酵素を固定化する試みをしてきた。研究の結果カプセル作成最適条件を見出し、固定化率をほぼ100%とすることに成功した。 今後の展開 作成したカプセルを使って人工光合成をおこない、水と太陽光からギ酸、最終的にはメタノールを生成することのできるシステムを構築するのが最終的な目標である。 |